Vol.02 一つひとつのこだわりから、より良いもの、新しいものが生まれる。

2012年5月7日にリニューアル移転した倉智産婦人科。
その設計および工事監理をしてくださったのが、studio S.E.A.の藤井先生と中村先生です。
院長はお二人の先生を「一流の建築家」と信頼し、お任せしたと言います。
ご夫婦であり、仕事のパートナーでもあるお二人の先生。
大変お忙しい先生方ですが、今回お時間を頂き、メディアディレクター河野がお話をうかがってまいりました。

院長から院の完成までに何十回とヒアリングが繰り返されたと聞いておりますが...

Question 01

そうですね。
初めは、雑談のような形で、どのようにものを考えておられるのかから始まり、クライアントのリクエストをとにかく聞くところからスタートします。

倉智先生やスタッフが、どんなことを考えているのか...
患者さんが、どんな気持ちでおられるのか...
入院中は、どんな風に過ごされるのか...
ヒアリングを繰り返しながら想像し、具現化するためのヒントをたくさんもらいます。

倉智先生にもヒアリングの途中、「まだ(聞きたいことが)あるんですか?」と、半ば呆れられて、笑われてしまいましたが。笑

院長の想像を超える回数だったようですね。笑
ヒアリングを重ねてみて、どんな印象を持たれましたか?

Question 02

初めてお会いした時は、正直言うと、ぶっきらぼうというか...、少しとっつきにくい方だなぁ...という印象を持ったのですが‥。
でも、色々お話をうかがっていくと、熱い想いや仕事に対する信念をお持ちで、産婦人科の将来像などすべてわかっていて、考えておられるのだなぁ...というのが伝わってきました。
そういう根っこの部分の真面目さや優しさがこのクリニックに込められていて、そういうものが患者さんに伝わるのかな...、そういうところが人気の秘密なのかな...と。

想いや要望をたくさん聞きすぎると、それを形にするのも大変なのでは...?

Question 03

いえいえ。むしろたくさんうかがえる方がありがたいですよ。
倉智先生が、患者さんの安全性、患者さんがどんな気持ちで過ごされるのか...というメンタルな部分への配慮、機能的なことなど、本当にたくさんの想いやこだわりをお持ちなのが、お話していて強く伝わってきました。
その反面、具体的なデザインに関しては細かい指示はなく、少し偉そうなもの言いになってしまいますが、餅は餅屋とわきまえておられるというか...
もちろん、根っこにあるものはしっかり押さえたうえですが、その先のデザインに関しては、好きなようにさせてもらったと思います。笑

藤井先生

中村先生

院長のこだわりや要望の中で、形にするのに
一番ご苦労されたのはどんなところでしょうか?

Question 04

一番難しかったのは、入院のための個室7室を全室南向きにしてほしいというご要望でしたね。
あれは、本当に大変でしたよ。笑
倉智先生は、患者さんに優劣をつけたくないという強い考えをお持ちで。
患者さんによって西向きの部屋だったり、北向きの部屋だったり、料金が違ったり...そういうことは絶対したくないと。それはもう、倉智先生の根っこにあるこだわりですからね。できないとは言えない。
限られた敷地の中で、いかに南向きに7室つくるかを考えるのは、設計上なかなか苦心するところでした。

お部屋の様子

どのお部屋にも自然光が差し込んで、とても気持ちが良いなと思っていましたが、そんな院長のこだわりがあったのですね。全室、壁紙などキーとなるカラーが微妙に違うのも、院長のこだわりですか?

Question 05

いえ。あれは、中村の道楽です。笑
壁紙の花にも、花言葉の意味を持たせてみたり...。
どれも些細なことなのですが、入院中の患者さんが気持ち良く過ごしてくださると嬉しいです。

医院外観

自然な光が差し込む...といいますと、3階のフリースペースも大きく光が差し込んで気持ち良いですね。天井が斜めになっているのも印象的ですが...。

Question 06

「光」に関して言えば、「空間の造形とは、光の造形だ。」という
有名な建築家(ルイス カーン 20C U.S.A.)の言葉があります。正にその通りで。光と影をどうコントロールするか。もうそれは、常に意識してテーマとして持っています。
3階のフリースペースも光が差し込み、広々としたスペースとなっていますが、より解放感を感じて頂けると良いなと、天井を通常より高くし傾斜を入れました。

お天気の良い日の3階は解放感があって、お昼寝したくなるくらい気持ち良いです。笑
建物の話になりましたが、エントランスの苔の壁もインパクトがありますね。
「苔」を使った意図のようなものはあるのですか?

Question 07

建築家というのは、常に意識して「材料」を探しているものなのですが、たまたまあの「苔」に出会い、「使ってみたいな。」と思っていました。よくよく調べてみると、「苔」というのは、一見枯れたように見えても再生し、生き続ける「生の強さ」のある植物だそうで。
今回、「生きているものを使いたい。」という想いもあって、産科という特徴を考えても、ぴったりだと思いました。季節に応じて表情が変わるところも面白いなと思います。

外観全体については、いかがですか?

Question 08

倉智先生から、「どこかに旧院のイメージも少し残したい。」というお話があって。旧院のイメージというと、外観のピンク色が印象的でしたが、ピンク色は扱い方がとても難しい色なんですよね。そのピンクをどう使うかは、難しいところではありました。

結果として、部分的にピンクを使われた...?

Question 09

そうですね。
あのピンクは、天候によっては白色に見えたり、
ピンク色に見えたり。

旧院のイメージであるピンクを一部入れつつも、
がらりと違う印象になりましたね。
ところで、藤井先生と中村先生は、
いつもお二人で一つの作品を手掛けられるのですか。

Question 10

そうですね。たいていの場合は一緒ですね。

役割分担などがあるのですか?

Question 11

明確な役割分担というのはないですが...、あえて比較的に...というのであれば、藤井が技術的な部分、中村がアートな部分という感じでしょうか...。でも、実際のところは、はっきりと分担しているわけではないですよ。

お二人で一つのものを創り上げようと思うと、
難しいところもあるのではないでしょうか?

Question 12

常に衝突していますよ。本当に些細な部分について。笑
でも、そういう時に妥協したり、平均をとるのはダメ。
どちらかの意見に納得できるまでとことんやるか、もしくは第3の新しいものが生まれるか...。

一つひとつへのこだわりの繰り返しで、より良いもの、
新しいものが生まれ、完成していったのですね。

Question 13

そうですね。我々は建築家としてのこだわりですが、それは倉智先生の産婦人科医として、院長としてのこだわりにも通じるところがあると思います。倉智先生も、より高いレベルを目指すための細やかなこだわりをたくさんお持ちですよね。

デザインにおいては、院長の好みも反映されたのでしょうか?

Question 14

もちろんお聞きしましたが、もうそこは、好きにさせていただいたかな。笑
クライアントの意向のままにデザインするという方法もあると思いますが、それでは私たちの存在の意味がないですから。そこはリスクもあるわけですが、良い意味で、常にクライアントのイメージを超えるもの、裏切るものを創らなければならないと思っています。でも結果として完成したものを見た時に、「想っていたものができた」と感じて頂けると、とても嬉しいですね。

中村先生

ー藤井先生、中村先生、お忙しいところをありがとうございました。

次回は、今回うかがったお話も踏まえながら、実際に完成した院内の様子を紹介する予定です。お楽しみに。

Contents

  • vol01 倉智産婦人科は、旧院の隣にリニューアル移転いたしました。
  • vol04 一つひとつのこだわりから、より良いもの、新しいものが生まれる。
  • vol05 倉智産婦人科院内のご紹介【前編】~スタッフに聞きました。「新院」の好きなところ。おすすめポイント!~
  • vol06 倉智産婦人科院内のご紹介【後編】~スタッフに聞きました。「新院」の好きなところ。おすすめポイント!~